署名証明書|印鑑証明書が取得できないとき

外国人の署名証明書について-登記申請における取扱い

登記の申請書に押印すべき人が外国人である場合、日本人と同じように市区町村長作成の印鑑証明書を用意することができません。多くの国には日本のような「印鑑登録・印鑑証明」の制度自体が存在しないためです。

そこで実務上は、印鑑証明書に代わるものとして「署名証明書(サイン証明書)」を添付する取扱いがとられています。これは、「この署名は本人が行ったものに間違いない」ということを、権限のある機関が証明する書面です。

この署名証明書の取得先は、その人どこに住んでいるか、また本国の制度がどうなっているかによって異なります。以下のとおり、①本国で取得する場合、②日本に居住していて印鑑登録をしていない外国人が日本で取得する場合、③本国官憲による証明が受けられない例外的な場合、の3つのパターンに分けて解説します。

なお、以下は平成28年6月28日法務省民商第100号民事局長通達「登記の申請書に押印すべき者が外国人であり,その者の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付することができない場合等の取扱いについて(通達)」(その後の平成29年2月10日法務省民商第15号通達、平成29年3月17日法務省民商第41号通達による改正・運用明確化を含む)を踏まえた内容です。なお、この通達において「外国人」とは、日本の国籍を有しない者をいうものとされています。

法務省 「4 外国人・海外居住者による登記申請に関する通達」

署名証明書とは

日本の商業登記・不動産登記の実務では、申請書や委任状、就任承諾書などに押印した印鑑について、本人のものであることを証する印鑑証明書の添付が求められる場面があります。

外国人の場合、この印鑑証明書に代えて、「印鑑届書等の署名が本人のものであることを証明する書面(=署名証明書)」を添付することで足りるとされています。ポイントは、証明の対象が「印影」ではなく「署名(サイン)」である点です。

本国で取得する場合の取得先

外国人が本国に所在している場合、署名証明書は、その本国官憲が作成したものを取得します。

  • 本国の行政機関(印鑑証明・公証に相当する制度がある場合)
  • 日本に所在する本国の在外公館(大使館・領事館)= 日本に駐在するものでも、第三国に駐在するものでも可
  • 本国に所在する公証人 →本国の「公証人」は本国官憲の一部として認められています

日本に居住していて印鑑登録をしていない外国人が、日本で署名証明書を取得する場合の取得先

日本に住んでいる外国人であれば、通常は市区町村で印鑑登録を行い、日本人と同様に印鑑証明書を取得することができます。しかし、印鑑登録をしていない場合や、そもそも印鑑登録ができない状況にある場合には、日本国内にいながら署名証明書を取得する必要があります。

本国の在日大使館・領事館

日本に居住している外国人は、日本国内にある自国の大使館・領事館(在日公館)が署名証明書のサービスを行っている場合、そこで証明書の発給を受けることができます。手続の詳細(必要書類・予約の要否など)は各国大使館・領事館によって異なるため、事前の確認が必要です。
総じて在日大使館は東京に集中しており、稀に大阪に領事館があるため、訪問して取得する必要がある場合は交通費を想定する必要があります。

③ 例外的な場合(Ex. 在日大使館・領事館による証明が受けられないとき)の取得先

上記①・②の方法によっても、本国の制度上の事情などから本国官憲作成の署名証明書が取得できないケースがあります。通達第3では、外国人の本国の法制上の理由等の「真にやむを得ない事情」から本国官憲作成の証明書を取得できない場合の代替的な取扱いが定められています。

やむを得ない事情に当たる典型例(平成29年2月10日通達による具体化)

  1. 本国に、そもそも署名が本人のものであることを証明する制度自体がなく、本国官憲において証明書を発行してもらえない場合
  2. 本国では制度自体はあるものの、現に居住している(本国以外の)国等に所在する本国官憲では発行を受けられない場合
  3. 居住している(本国以外の)国等に、そもそも本国官憲(大使館・領事館等)が存在しない場合(第三国の公館が兼轄している場合を含む)

さらに平成29年3月17日通達により、次のケースも同様に「やむを得ない事情」があるものとして扱ってよいことが明確化されました。

  • 日本国内にある本国の領事その他権限のある官憲が署名証明書を発行サービスを行っていないため、日本国内で証明書を取得できない場合、または日本国内に当該外国人の本国官憲が存在しない場合(この場合、本国以外の国で本国官憲による証明の取得自体は可能であっても、やむを得ない事情があるものとして扱ってよいとされています)

この場合の取得先・必要書類

上記のようなやむを得ない事情がある場合には、本国官憲作成の署名証明書に代えて、次の組み合わせで対応が可能とされています。

  • 日本の公証人が作成した、署名が本人のものであることの署名(サイン)証明書
  • 上申書(登記の申請書に押印すべき者である本人の署名があり、本国官憲に確認したが証明書を発行していない旨の回答があった、または本国官憲が存在しない旨などを記載したもの)

つまり、本国官憲による証明が現実的に得られない場合の受け皿として、(a)日本の公証人による証明(サイン認証)を、(b)上申書(本人の署名付き)とセットで用いることが認められています。

日本の公証役場で取得する場合の手順

日本国内の公証役場で「私署証書認証」(署名証明書)を受ける方法;

  • 認証してもらいたい署名証明書の文案を作成する(氏名、住所、国籍、署名等が含まれる書面)
  • 公証役場に事前予約のうえ出向き、公証人の面前で書類に署名(面前認証)
    ※公証人による認証にあたっての必要書類(パスポート等)と公証人手数料の事前確認要
  • 公証人が「この署名は本人が行ったものである」旨を認証する文言を付した認証文を作成

まとめ

ケース取得先
① 本国に居住している外国人本国官憲(本国の所轄機関、または居住国・第三国に駐在する本国の領事・大使館)
② 日本に居住し印鑑登録をしていない外国人本国の在日大使館・領事館
③ 日本に所在する本国官憲による証明が受けられない例外的な場合(真にやむを得ない事情があるとき)日本の公証人による署名証明書+上申書(本人署名)

外国人が当事者となる登記申請では、どのケースに該当するかによって必要書類や手続の流れが変わり、また各国大使館・領事館ごとに実務上の運用(予約制の有無、必要書類、費用など)も異なります。取得に時間を要することも多いため、登記のスケジュールが決まっている場合は早めの準備・専門家への相談をおすすめします。

目次